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胃ろうの人を介護するときのポイントと胃ろうのメリット・デメリット

「胃ろう」とは、身体機能の低下などにより口から食事をすることが困難になった人が、胃から直接栄養を摂取するための医療措置のことです。食べることは人間が生きていく上で大切な行為であり、おいしい食事は人生の質を高めてくれます。それだけに、できる限り自分の力で食事を続けたいと考える人が多いでしょう。

しかし、胃ろうには肺炎などのリスクを回避し、患者本人と介護者の両方にかかる負担を減らせるというメリットがあることも確かです。

今回は、高齢者の介護に携わっている人のために、胃ろうの基礎知識や、胃ろうの人を介護する方法をご紹介します。

胃ろうのメリット・デメリットイメージ1

胃に直接栄養を入れる「胃ろう」とは

胃ろうとは具体的にどのようなものでしょうか。胃ろうの基礎知識と目的、対象者についてお伝えします。

胃ろうとは

胃ろうは、チューブで胃に直接栄養を送り込むための穴のことを指します。胃ろうを作ると、栄養補給のためのルートが増えます。

胃ろうを作るための手術のことをPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡的胃瘻造設術)と呼びます。胃ろうの手術は内視鏡を使って行います。順調に進めば30分程度で終わり、入院期間も短くて済むため、体への負担が少ない手術といわれます。手術をした後4日前後で入浴もできるようになります。

胃ろうを通じて栄養補給をする場合は、必要最低限の栄養剤を胃に流し込む形になるため、体重が落ちる例もあります。喉などにチューブを入れるわけではなく、口から食べることもできるため、胃ろうにしたとしても、口から食事をとるリハビリを続けるのが望ましいでしょう。

胃ろうの目的と対象者

胃ろうは、なるべく体に負担をかけずに栄養を摂取することを目的としています。
主な対象者は、重度の認知症を患っていて、自力で口から食事をとるのが難しい人や、食べ物を飲みこもうとするとむせてしまい、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性が高い人などです。

胃に穴を開ける方法ではなく、鼻からチューブを胃まで挿入する方法もあります。これを「経鼻胃管」といい、胃ろうと同様に胃に直接栄養を送り込むことができますが、人によっては呼吸がしづらかったり、鼻に異物感があったりするため、体に負担がかかることも事実です。そのため、長期的に口以外からの栄養補給が必要な患者には、体への負担が少ない胃ろうをすすめる病院もあります。

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胃ろうのメリットとデメリット

胃に穴を開けることに抵抗がある人は少なくないでしょう。それでも胃ろうにはメリットがあります。

メリット

胃ろうのメリットは、鼻からチューブを入れる経鼻経管で栄養補給するよりも利用者の痛みや体への負担が少ない点にあります。食事介助にかかる時間や手間が少なくなるため、介護者側の負担も軽くなります。
また、嚥下障害による誤嚥性肺炎のリスクを軽減できると考えられています。高齢者にとって肺炎は命にかかわる病気であるため、これは胃ろうの大きなメリットといえるでしょう。なお、洋服を着れば外からはわからないため、外出に抵抗を感じることも少ないでしょう。

デメリット

何らかの理由で免疫力が低下したときに、胃ろうの周辺の皮膚がただれたり、まれに注入した栄養剤の逆流を起こしたりすることがあります。身体状況によっては在宅での介護も可能ですが、対応できるスタッフがいないとの理由で、施設への入居は難しい場合があります。胃ろう専用の栄養剤や半年に一度のカテーテルの交換など、費用がかかる点もデメリットとして挙げられるでしょう。
認知症の人などは、自分でカテーテルを抜いてしまうことがあるため、注意が必要です。一度カテーテルを抜くと、たった一晩で穴がふさがってしまうこともあり、その場合は再手術をすることになります。
また、人間の「尊厳」という観点から物議を醸していることも事実です。

胃ろうカテーテルの種類

胃ろう用のカテーテルには、大きく分けて、体外部に使用するものと胃内部に使用するものの2種類があり、組み合わせて使います。

体外部

体外部の固定板には「ボタン型」と「チューブ型」があります。

・ボタン型
体外にチューブが出ていないため、目立たず、動作の邪魔になりません。また、栄養剤が通るチューブの長さが短いため、内側が汚れにくく、掃除の手間が少なくなります。ただし、いちいちボタンを開けてチューブをつなぐ必要があります。その際に片手ではボタンを開閉しにくい点もデメリットといえるでしょう。

・チューブ型
栄養剤を入れるときにチューブとの接続が簡単にできるというメリットがあります。しかし、体外にチューブが出ているため、邪魔になりやすく、チューブの内側が汚れやすいというデメリットがあります。

胃内部

胃内部の固定板には「バンパー型」と「バルーン型」があります。

・バンパー型
胃の内壁にしっかりと固定されるため抜けにくく、交換までの期間が約半年と長い点がメリットです。しかし、しっかりと固定されている分、カテーテルの交換時には痛みや圧迫感を感じやすいというデメリットがあります。

・バルーン型
挿入後にバルーン内に蒸留水を入れて膨らませて固定します。カテーテル交換時にもバルーン内の蒸留水を抜いて小さくしてから抜くため、痛みを感じにくく、交換が容易である点がメリットです。しかし、バルーンはあまり長くもたないため、1~2カ月に1度のペースで交換しなければなりません。

胃ろうカテーテルは、体外部と胃内部の固定板を組み合わせたものを使用します。例えば、「ボタン・バルーン型」や「チューブ・バンパー型」などです。胃内壁の厚さは個人差があるため、組み合わせを変えることで、より自分の体に合ったカテーテルを使用することができます。また、交換時に病院で行わず、自宅や施設で医師が交換できる場合があります。生活する環境や本人の意思も含めて相談しましょう。

胃ろうのメリット・デメリットイメージ2

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胃ろうの人を介護するポイント

胃ろうの人を介護する際のポイントと注意点をお伝えします。

口腔ケアを徹底する

胃ろうにすると、口から物を食べる機会が減るため、唾液の分泌が減り、口の中が汚れやすくなります。食べ物を噛んだり咀嚼したりすることがないので、嚥下機能がどんどん低下していきます。口から食べ物を食べなければ、誤嚥を起こすこともなく、誤嚥性肺炎の心配はないと思われがちですが、痰などに絡んだ細菌を飲み込むことで肺炎を引き起こしてしまう可能性も考えられます。口腔ケアを徹底し、それらのトラブルを防ぐよう心掛けましょう。

体を清潔に保つ

胃ろうをしていても入浴することができます。その際、ビニールなどで保護する必要もありません。胃ろう周辺は常に清潔にしておく必要があるため、入浴時には石鹸できれいに洗い、入浴後は十分に乾燥させるようにしましょう。

本人の状態に合わせて栄養剤を選ぶ

胃ろうに使用する栄養剤には、大きく分けて「消化態栄養剤」と「半消化態栄養剤」の2種類があります。消化態栄養剤はタンパク質がすでに分解された形で含まれており、消化吸収能力の低い人が使用します。半消化態栄養剤はタンパク質がそのままの状態で含まれており、水分制限がある人向けの製品も存在します。

栄養剤には「粉末タイプ」「液状タイプ」「ゼリータイプ」があります。
粉末タイプは水に溶かして使用します。液状タイプは水に溶かす手間がなく、そのまま使用することができます。ゼリータイプは逆流を防ぐ点で効果があるとされていますが、カテーテルによっては使用できない場合もあります。
本人の状態に合わせて、適した栄養剤を選ぶことが大切です。

実際に栄養を体内に入れる行為は、専門家に任せる

胃ろうを通じて体内に栄養を入れる作業は医療行為なので、素人が行うことができません。医師や介護士といった専門家に任せましょう。

胃ろうのメリット・デメリット3

胃ろうを活用して安心できる介護生活を

胃ろうを延命治療のために使用することに疑問を唱える人がいることも事実です。しかし、胃ろうは、口から栄養を摂取できない高齢者にとって、安心して栄養補給できる措置の一つと考えられています。少しでも長く家族と一緒に過ごすためにも、後悔のない決断をすることが大切です。口から物を食べることができない高齢者を介護している人は、メリットとデメリットをよく把握した上で、胃ろうの導入を検討してみるのも良いかもしれません。

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この記事の監修者

在宅緩和ケア充実診療所・機能強化型在宅療養支援診療所
城北さくらクリニック
院長 犬丸秀雄
HP:http://houmon-shinryo.jp/jsc/

日本大学医学部卒業後、日本大学板橋病院(麻酔科・救命救急・ICU)を経て、赤塚駅前クリニックを開業し往診も行う。平成24年より、東京都練馬区を中心に訪問診療専門の診療所を開設。
24時間体制、コールセンター設置等を整備し、医師14名・看護師5名(令和5年4月現在)でご自宅や施設へ訪問診療を行っている。

※本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。

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