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認知症の種類と症状は?対応時のポイントと介護疲れしない工夫

ある日、家族に認知症状があるとわかったら?認知症は本人にも家族にも切実な問題です。認知症という病気を正しく理解し、誤解や偏見なく対応することが求められます。

また、認知症の症状や原因を知ることで、予防への取り組みやもの忘れ外来への通院といった、初期段階の対応の改善に生かすことができます。

認知症の高齢者を家族介護することは容易ではありません。どうすればいいのでしょうか。今回は認知症の人への正しい対応方法をご紹介します。

認知症の種類と症状イメージ1

認知症って何?もの忘れとどう違うの?

認知症とは何でしょうか。もの忘れとはどう違うのでしょうか。まず認知症を理解するための基礎知識をお伝えします。

認知症とは?

認知症という名称は、特定の病名ではなく、記憶などの情報をつなぎ合わせて適切に判断することができなくなっている状態を指します。以前は「痴呆症」と呼ばれていましたが、痴呆には「愚か」という意味もあることから、「認知症」と呼び方が変わりました。

日本神経学会では、認知症を「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態をいい、それが意識障害がないときに見られる」と定義しています。

体験したことの一部を忘れるのは、いわゆる「もの忘れ」です。例えば、昨日の食事は何を食べたかをふと思い出せないことはあっても、何かを食べたことは覚えています。落ち着いて記憶をたどると何を食べたか思い出せるでしょう。

しかし、認知症が進行すると、食べたものだけでなく、食べたこと自体を忘れてしまったり、メニューを教えられても思い出せなくなったりします。このように一般的なもの忘れと違い、認知症では日常生活にも支障が及びます。

認知症の主な種類

認知症で治療して症状が改善するケースは一部に限られます。場合によっては、症状の進行を遅らせられる可能性があるため、種類を確認しておきましょう。多くの場合、認知症はアルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症・脳血管性認知症のいずれかであり、これらは「三大認知症」と呼ばれています。治療できる認知症は三大認知症以外で、慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症・脳腫瘍などが原因のタイプです。

・アルツハイマー型認知症
認知症の中で一番多いとされ、脳に「アミロイドβ」と呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まると生じると考えられています。症状としては、近時記憶の障害が目立ちます。例えば、昨日のことは思い出せないが、若い頃に習得した知識や身のこなしは忘れていないというのが典型です。

・レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症です。レビー小体という特殊な物質が脳内の神経細胞内にできることが原因で、幻視や見間違いが生じるとされます。無表情や筋肉がこわばり転倒しやすくなるパーキンソン症状が現れることも特徴です。

・脳血管性認知症
脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)が原因で発症します。身体のマヒや嚥下(えんげ=食べ物を飲み込むこと)障害、言語障害などが現れます。

特殊なたんぱく質の蓄積が原因と見られるアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症については、たんぱく質の蓄積を抑えたり除去したりする薬が開発されて使用されています。また脳血管性認知症には血管障害を治療する薬が用いられます。

2021年6月に米国で承認された「アデュカヌマブ」は、アルツハイマー病治療の新薬で、これまでより原因物質を抑える効果が認められていることから、世界の注目が集まっています。ただし、現時点では薬による治療は認知症の進行を遅らせることが限度といわれ、日本では販売承認が認められていません。

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あなたの親は大丈夫? 認知症を疑うポイントと検査方法

認知症は身近な親族だけでなく、自分の身に起こるかもしれません。認知症の主な症状を挙げますので、チェックしてください。


認知症を疑うポイント

認知症を疑うポイントとして、「同じことを繰り返し言う」「以前はできていたことができなくなる」「同じ服ばかり着る」「物忘れや探し物の回数が増えるなどが挙げられます。自分の年齢や「今日は何年何月何日の何曜日か」「今の季節は何か」「今どこにいるか」などがわからなくなっている様子が見られたら、認知症の初期症状を疑いましょう。

このように、認知症の初期症状があっても日常生活に支障のない状態は「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれます。早期の発見で症状が改善する可能性があるため、できるだけ早めに専門医の診察を受け、症状を悪化させないよう対処することが望まれます。

認知症の主な検査方法

認知症の疑いで医療機関を通院すると、記憶能力・問題解決能力・注意力・計算力・言語能力などを調べる検査が実施され、総合的に判断が行われます。言語的能力や図形的能力(空間認知)を調べる「MMSE検査」や、「長谷川式簡易知能評価スケール」などの知能検査、MRI・CT・PET・SPECTなどの頭部検査が行われます。

認知症の主な症状

認知症の症状は、大きく「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」の2つに分けられます。ここではそれぞれの主な症状について解説します。

中核症状

認知症の中核症状としては、主に「記憶障害」「見当識障害」「失認、失行、失語」「実行機能障害、判断力障害」が挙げられます。これらは、認知症を発症した方のほとんどに見られる症状です。認知症の原因となる疾患によって脳細胞が萎縮や変性するために起こると見られています。具体的な特徴については、以下で解説していきます。

・記憶障害
物忘れをしやすく、少し前に食べた食事の内容はもちろん、食事したこと自体を忘れてしまいます。このように直近の出来事を忘れてしまう一方で、昔の出来事や感情は覚えているのが特徴です。薬を飲んだかどうかを忘れてしまうため、服薬治療を受けている場合は注意しましょう。

・見当識障害
日付や曜日のほか、現在の季節、さらには今いる場所がわからないという障害です。そのため、外出したら戻れなくなる症状が現れます。近所へ出かけただけで迷子になってしまったり、通常は眠っているはずの深夜に出かけてしまったりする場合があります。

・失認、失行、失語
失認は五感の感覚が働かない状態です。失行は、手足はマヒしていないのに、当たり前のようにできていた「歯みがき」や「ネクタイを締める」といった行動ができない状態のことを指します。失語は言葉を聞く・話す・読む・書くという言語情報に関する機能が働かない状態です。

・実行機能障害、判断力障害
以前は段取り良くできていた日常生活での行動や、善悪などの判断ができなくなる状態です。例えば、手順を決めて取り組む料理や洗濯などの家事ができなくなったり、リモコンを使ってテレビのスイッチを入れられなくなったりする例がよく知られています。

これらの障害のために、認知症の人は過去・現在・未来という連続性の中で自分や物事をとらえることができなくなり、過去の記憶をたどることも未来を予測することもできず、不安な感覚に陥ってしまいます。その結果、落ち着かない言動を取ったり、繰り返し同じ質問をしたりする行動が見られるようになります。

周辺症状(BPSD)

認知症の周辺症状とは、中核症状から二次的に起こる症状を指します。「Behavioral and psychological symptoms of dementia」の略称でBPSD、あるいは「行動・心理症状」と呼ばれます。具体的な症状は「徘徊」「抑うつ」「失禁、弄便」「幻覚」「妄想」「睡眠障害」「暴言、暴力」などです。これらの症状は、脳の器質性の病変によって認知機能に障害を持つ人が、現実生活に適応しようとしたときに生じます。ほとんどの方に見られる中核症状に対して、周辺症状には個人差があることが一般的です。なかには介護者の大きな負担となる症状もあるため、対応方法を確認しておきましょう。

・徘徊
あてもなく歩き回ることを指します。従来は目的もなくさまようと考えられていましたが、最近では認知症の人は何か目的があってどこかを目指しているという見方もあります。徘徊することによって、何らかの事故に遭ってしまうリスクもあるため注意が必要です。

・抑うつ
気分が落ち込んで活動することを嫌がる状態です。思考や感情が閉鎖的になる中で頑張り続けると、うつ病へと進展することがあります。こうした抑うつになると、身の回りの方が話しかけても反応が薄いといった、無関心の状態に陥りやすいといえます。

・失禁、弄便
意思に沿わず便をもらしてしまうことです。弄便は、排泄した便をいじり壁や床などにこすりつけたりする行為を指します。これらの症状は介護者のストレスとなりやすい一方で、場合によっては本人も精神的なダメージを受けていることがあるため、自尊心に配慮した対応が求められます。

・幻覚
実際には外部からの感覚的刺激が与えられていないにもかかわらず、刺激を受けたと感じたり、幻視や幻聴が起こったりします。こうした幻覚症状は周囲の方から理解されにくく、本人が孤独を感じてしまう場合があります。幻覚の存在を訴えられても、強く否定をしないことが大切です。

・妄想
例えば、誰も何もしていないのに、「財布を盗まれた」と思い込む状態が妄想です。介護者自身が疑われて、本人から警戒されてしまうケースも少なくありません。しかし、いくら「誰も盗んでいない」と説明しても、認知症の本人は容易に理解するのが難しいといえます。

・睡眠障害
眠りに入りづらくなる状態や、眠りの途中で目が覚めてしまう状態のことです。体内時計をつかさどる神経が異常をきたすことにより起こります。認知症の方の生活が昼夜逆転してしまうと、本人だけでなく、それに付き添う介護者の負担も大きくなります。

・暴言、暴力
いろいろなことが理解できなくなっている認知症患者の焦燥や怒りが、本人または他者に向けた攻撃的行為となって現れることがあります。普通の人なら我慢できることでも、認知症によって感情を抑えられなくなっていると考えられています。介護者自身が暴力を振るわれてしまう場合は、安全のためにも一度専門家へ相談するようおすすめします。

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認知症の人への対応のポイント

認知症の人への対応についてご紹介します。

対応方法のひとつは、自分が必要な存在だと認識させることです。本人ができることは何かを把握して、できることをお願いすると、達成感や互いの信頼感につながります。そのときは感謝の気持ちを伝えましょう。少し大げさに褒めるくらいで良いでしょう。

プライドを傷つけないことも大事です。「叱らない」「指摘しない」「否定・議論しない」よう注意しましょう。できるだけ相手の意思を受け止めて汲み取るようにして、穏やかな声で対応しましょう。何度も言い聞かせようとしても、認知症の人には意味がわからず、反感を抱かせることにつながります。

また、なるべく環境を変えないようにして、人間関係、生活環境、生活習慣を認知症の人のリズムやペースに合わせてあげることも大切です。

孤独にさせないで人と関わる時間を定期的に設けてあげましょう。在宅であれば時々話しかけたり、施設であれば他の入所者と顔を合わせたり、交流する機会を設けると良いでしょう。孤独は不安感を募らせ、不安感は認知症を悪化させます。

認知症の人の行動をよく観察することも重要です。なんとなくソワソワしてきたらトイレに行きたそうだとか、今の介護を嫌がっていないか反応に注意するなど、さまざまな変化を見逃さない心掛けが必要です。
認知症サポーター講座や認知症カフェ等、気軽に認知症を理解できるものも多くあるため、足を運んでみてください。

介護疲れしないための工夫

特に在宅で認知症の人を家族介護する場合は、家族にも身心の負担が大きく、疲労が溜まります。介護疲れしないための工夫についてご紹介します。
大事なのは、一人で抱え込まずに周囲を頼ることです。家族介護者は介護の専門家ではないのですから、一人でできないことがあって当たり前です。手始めに家族のほかのメンバーや親戚に相談しても良いでしょう。

また、専門機関に相談することも大切です。保健センター、高齢者相談センター(地域包括支援センター)、在宅介護支援センターなどさまざまな窓口で専門家に相談することができます。自治体や福祉団体などが開催する介護教室に参加したり、介護の動画などで専門家から学んだりする方法もあります。

介護には休みがありません。しかし、介護する側にも一時的休止(レスパイト)は不可欠です。そのための支援をレスパイトサービスと呼び、介護保険を利用して介護サービスを受けることができます。

在宅で家族介護をする場合、ホームヘルパーによる訪問介護を利用すれば、家族介護者にとって一時的な休息になります。サービス内容は排泄、入浴などの身体介護、料理、洗濯などの生活援助です。

また、生活圏の地域にある介護事業所の利用者となって通所し、必要なときは宿泊もできる「小規模多機能型居宅介護」というサービスもあります。「認知症対応型通所介護」は認知症の65歳以上の要介護者がデイサービスセンターなどを利用できるというものです。一方、「認知症対応型共同生活介護」なら、グループホームで認知症の人たちが共同生活を送ることができます。

認知症の要介護者に対応している介護施設としては、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設(2017年度末廃止)があります。廃止された介護療養型医療施設に代わり、新たに「介護医療院」が新設されました。

介護医療院でも同様に認知症の要介護者を受け入れており、なかでも認知症に対応するのはI型です。介護医療院には「Ⅰ型」と「Ⅱ型」の2種類があり、I型のほうが重い疾患を持つ患者の利用が想定されています。要介護度や本人の意思など状況に応じて効果的な利用を検討してください。

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認知症の人の受け入れに対応できるイリーゼ

ご家族に認知症の方がいて、入居できる施設をお探しなら、イリーゼをご検討ください。受け入れ体制を整えた施設内で、認知症の方の生活をサポートいたします。ここでは、イリーゼの施設をご紹介します。

充実した受け入れ体制

イリーゼの施設では、見守りシステムの導入や、スタッフが必要に応じて夜間の見回りを行い、安全を確認しています。ご家族の認知症症状が心配なときもご安心ください。なかには、認知症の方でも参加しやすいレクリエーションを実施している施設もあります。自宅では介護をするのが難しい認知症の方でも入居が可能です。施設のスタッフ一同が、入居者様に穏やかな生活を送っていただけるようサポートいたします。

ただし、通常の介護方法及び接遇方法では対応できない認知症の方は、入居できない場合があります。実際に受け入れが可能か、施設によって状況が異なるため、詳しくは事前にご相談ください。

入居の流れ

1.受付・見学
まずは、お電話またはホームページからお問い合わせください。資料請求や見学のご案内をいたします。

2.申込み
ご入居をご検討いただけましたら、お申込みまたは仮押さえへと進みます。ご契約が成立するまでは、途中解約も可能でございます。

3.必要書類の提出
当社書式の「健康診断書」「入居申込書兼個人情報使用同意書」、医療機関書式の「診療情報提供書」など、必要書類をご用意いただきます。

4.入居前の面談
契約内容、重要事項、管理規定などについて、十分にご説明いたします。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

5.契約・入金
内容にご納得いただけましたら、契約書にご署名とご捺印をいただきます。ご入居までに指定の口座へ入居金をお振り込みください。

6.入居
介護スタッフが万全の体制を整えて、ご入居をお待ちしております。お体の不自由な方は、お迎えサービスをご利用いただけますので、お気軽にお申し付けください。

認知症を理解し、患者と良い関係を築く介護体制を

家族が認知症になると寂しさや、時には腹立たしい気持ちが湧いてくる人もいるでしょう。しかし、認知症の人は何もかもできなくなるわけではなく、自分でできることもあります。認知症の人への愛情と病気に対する正しい知識を持って対応し、良い関係をつくっていくことが大切です。

ただし、家族介護は長期化すればするほどケアをする家族への負担が大きくなります。専門家の相談窓口や介護サービスなどを上手に利用して、無理のない介護を心掛けましょう。

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この記事の監修者

認知症の種類と症状イメージ2

在宅緩和ケア充実診療所・機能強化型在宅療養支援診療所
城北さくらクリニック
院長 犬丸秀雄
HP:http://houmon-shinryo.jp/jsc/

日本大学医学部卒業後、日本大学板橋病院(麻酔科・救命救急・ICU)を経て、赤塚駅前クリニックを開業し往診も行う。平成24年より、東京都練馬区を中心に訪問診療専門の診療所を開設。
24時間体制、コールセンター設置等を整備し、医師14名・看護師5名(令和5年4月現在)でご自宅や施設へ訪問診療を行っている。

※本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。

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