パーキンソン病ってどんな病気?予防法は?治療すれば完治する?
介護が必要になるきっかけの一つにパーキンソン病の発症があります。パーキンソン病は主に50歳以上の中高年に見られる進行性の疾患で、手足のこわばりといった軽い症状から、最悪の場合は寝たきり状態になることもある、現代の医学では完治が困難な難病として知られています。
今回は、「家族にパーキンソン病の疑いがある」「親がパーキンソン病を発症した」という人のために、パーキンソン病の症状や予防法についてご紹介します。
パーキンソン病とは?
パーキンソン病は50~65歳で発症することが多く、高齢になるほど発病する確率が高まるといわれています。そのため、社会の高齢化がこれから進むにつれて患者数も増加すると予想されています。
パーキンソン病の特徴と進行
パーキンソン病は、手足の震えや筋肉のこわばりなど、運動機能に障害が現れる病気です。「手足が震える」「動作が遅くなる」といった自覚症状が出たら、パーキンソン病を疑ったほうがいいでしょう。
症状には、体の片側から出始め、次第に反対側に広がっていくという特徴があり、ゆっくりと進行します。
パーキンソン病になると運動障害が現れるため、動くのが億劫になって生活の質が下がり、最終的には寝たきりになってしまう人もいます。
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パーキンソン病の主な症状
パーキンソン病の症状には、脳内物質の減少によって起こるとされる「運動症状」と、それ以外の「非運動症状」の主に2種類があります。
脳内物質の減少
・「ドーパミン 」の減少
人間のあらゆる機能を統制する役割を担うのが脳です。脳内では、神経伝達物質が細胞間の情報伝達を介在していますが、パーキンソン病を発症すると、脳内の快楽物質とも呼ばれる神経伝達物質「ドーパミン」が減少し、それによって体の運動機能に障害が出るとされています。
・「黒質」の細胞が減少
パーキンソン病の症状の原因と考えられているドーパミンの減少は、中脳の中にある「黒質」と呼ばれる部分で起こります。パーキンソン病の原因ははっきりと解明されていませんが、黒質の中のドーパミン神経が変性して剥がれ落ち、その部分に異常なタンパク質が集まることが確認されています。
代表的な運動症状
パーキンソン病の代表的な症状には以下の四つがあります。
・手足の震え
パーキンソン病の初期症状の中でもわかりやすいものが手足の震えです。手を動かさず安静にしているときに、手足に震えが見られる場合は、パーキンソン病を疑ったほうが良いかもしれません。
・手足のこわばり
手足の筋肉が硬くこわばり、スムーズに動かすことが難しくなります。リラックスしようと思っても体の力をうまく抜けず、全体的に動き方が不自然になります。
・姿勢反射(転びやすい)
体のバランスを保つことができず、姿勢を変えるときの反射が鈍くなります。いったん歩き出すと、スピードが速くなったり、方向転換が難しくなったりします。転ばないようにしようとして歩行が小刻みになり、歩行速度が速くなることもあります。
・無動、寡動
運動麻痺や筋力の低下がないにもかかわらず、日常生活の動作が遅くなります。自発的な行動が少なくなり、筋力が低下してますます活動しなくなるという悪循環に陥る可能性があります。
初期のパーキンソン病では、身の回りのことは行えますが、症状が進行するにつれ、排泄や着替えといった日常生活に必要なことが自分でできなくなり、介護が必要になります。
非運動症状
・自律神経症状
外部からの刺激に対して無意識に体の機能をコントロールする役割を担うのが自律神経ですが、パーキンソン病を患うと、この自律神経が乱れ、「便秘」「排尿障害」「発汗異常」などを引き起こします。
・精神症状
病気に対するショックやパーキンソン病そのものの症状により、うつ病を発症したり、幻覚や妄想が現れたりすることがあります。これらの精神症状は、治療薬の副作用として見られる場合もあるので、治療のために薬を服用する際は、医師によく相談しましょう。
・睡眠障害
パーキンソン病が進行すると、心身に安らぎを与え精神の安定をもたらす「セロトニン」などの神経伝達物質の分泌にも影響が及び、不眠症になることがあります。深く眠っている時間が減ったり、眠りの最中に異常行動が現れたりしていないかどうか、注意深く観察してください。
・認知機能障害
外からの刺激に鈍くなったり、判断力や記憶力が低下したりします。場合によっては、認知症とよく似た状態になることがあります。
パーキンソン病の予防法
パーキンソン病の原因はまだはっきりしていないため、現状では確実な予防法は存在しません。しかし、以下に紹介する方法は、病状の悪化や、パーキンソン病と関係がある脳内物質の減少を防ぐことにつながると考えられています。
運動する
手の震えや姿勢反射など、思うように体を動かせないという運動症状が現れるため、患者本人が外に出るのを嫌がるようになりがちですが、病状を悪化させないためには、適度に運動をすることが大切です。そうすることで、筋力の低下を防げるだけでなく、ドーパミンの増加にもつながります。
ドーパミンを増やす
ドーパミンの分泌との関係性が指摘されているパーキンソン病。日常生活の中で意図的にドーパミンを増やすことは、パーキンソン病患者の生活の質を向上させることにもつながります。
・好きなことや得意なことをする
幸福感を得られ、やる気を高める役割を果たすドーパミンは、好きなことや得意なことをすることで分泌が増えるといわれます。また、何かを達成したときの報酬により、ドーパミンの分泌が活性化されるともいわれています。達成できそうな目標を立てて、達成するたびにご褒美を得られるような設定にするとよいでしょう。
好きなことを楽しみながらたくさん笑うこともおすすめです。
・「チロシン」を含む食品を食べる
タンパク質の一種であるチロシンは、ドーパミンをはじめとする神経伝達物質の原料とされる栄養素です。乳製品やアーモンド、大豆、かつお節などに豊富に含まれていて、ストレス緩和やうつの改善効果が期待できるとされています。
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パーキンソン病の症状が現れたときの対処法
パーキンソン病の症状が現れたときには、医療機関を受診して、以下の対処を行っていきましょう。
まずは検査を受ける
パーキンソン病の症状が現れたら、すみやかに医療機関で検査を受けることが大切です。検査の結果、以下のポイントに当てはまれば、パーキンソン病と診断されます。
・代表的な四つの運動症状がある
・CTやMRIの検査で脳に明確な異常が確認されていない
・パーキンソン病に似た症状を起こす薬を服用していない
・脳血管障害や脳変性疾患ではないと証明されている
リハビリをする
パーキンソン病は、スムーズに体を動かせなくなるため、活動が制限されやすい傾向にあります。しかし、パーキンソン病だからといって運動を制限すると、体の機能はどんどん低下していきます。
パーキンソン病と診断されたら、体の運動機能を維持するために、日常生活の中で進行度に合わせたリハビリを行うことが大切です。トレーニングやストレッチなどを取り入れ、体の筋肉を鍛えましょう。
パーキンソン病の症状がある程度進行している場合は、理学療法士や作業療法士といったリハビリの専門家と相談しながら運動を取り入れていきます。
薬を服用する
パーキンソン病で行われる代表的な治療法が薬物療法です。患者の容体に応じて、服用する薬の種類や服用量、薬の組み合わせなどは異なり、いずれも医師の処方が必要です。処方される薬にどのような副作用があるのか、担当の医師にあらかじめ確認しておき、患者本人と家族がしっかり納得した状態で服用するようにしましょう。
脳の手術を受ける
パーキンソン病による運動症状を改善するために、脳の手術が行われる場合があります。手術が実施されるのは、薬で症状をうまくコントロールできないと医師に診断された場合です。パーキンソン病の手術には、大きく分けて2つのタイプがあります。
・凝固術(MRガイド下集束超音波(FUS))
脳内の特定の部位に熱を加える手術法です。熱を加える部位により、手足の震えや、運動症状の日内変動(1日の中で病状が変化すること)の改善が期待できますが、人によって治療効果に差があったり、持続した効果が期待できなかったりする場合もあります。
・脳深部刺激療法
脳の深い部分に電極を設置し、胸には専用の装置を埋め込んで絶えず刺激を与え、神経細胞の活動を休ませます。体に異物を残すというデメリットがありますが、凝固術のように脳内組織を破壊せず、同様の効果が得られるといわれています。
いずれの手術も、病気の進行レベルなどによって現れる効果に差があります。すべての患者に適した治療法とはいえないため、手術を受けるかどうかは、医師とよく相談しましょう。
完治は難しいが、治療技術はかなり進歩している
現在は、薬や手術による対症療法のみが行われていますが、今後新たな治療方法が確立されることも期待されています。
パーキンソン病の原因と考えられる遺伝子が見つかり、遺伝子治療についての研究が行われているだけでなく、いろいろな細胞に分化する機能を持つ「iPS細胞」や「ES細胞」の移植による治療も注目されています。
いずれかの治療法の有効性が確認され、実際の治療に応用されるようになれば、パーキンソン病が完治する未来がやってくるかもしれません。
パーキンソン病と正面から向き合った生活を
パーキンソン病を患うと、運動機能障害だけでなく、うつ症状・認知症状などの非運動症状も起こるため、その後の患者の生活の質は、周囲のサポートが左右するといえるでしょう。
今のところ、パーキンソン病の進行を完全に食い止めたり、完治させたりできる治療法はなく、対症療法が中心です。
パーキンソン病そのものはすぐに命にかかわる病気ではありません。発病後は、症状一つひとつとしっかり向き合い、医師に適切な処置を施してもらいながら、患者本人も家族も楽しく生活できるように工夫をすることが大切です。
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この記事の監修者
在宅緩和ケア充実診療所・機能強化型在宅療養支援診療所 城北さくらクリニック 院長 犬丸秀雄 HP:http://houmon-shinryo.jp/jsc/
日本大学医学部卒業後、日本大学板橋病院(麻酔科・救命救急・ICU)を経て、赤塚駅前クリニックを開業し往診も行う。平成24年より、東京都練馬区を中心に訪問診療専門の診療所を開設。
24時間体制、コールセンター設置等を整備し、医師11名・看護師5名(令和3年6月現在)でご自宅や施設へ訪問診療を行っている。
※本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。