地域包括ケアシステムとは?超高齢化社会に求められる新しい介護の形
高齢者が住み慣れた地域で自分らしい人生を全うできる社会を目指して、2025(平成37)年を目途に整備が進められているのが、「地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)」です。2025年は、第一次ベビーブームと呼ばれる1947年~1949年に生まれた「団塊の世代」の人すべてが75歳以上の後期高齢者になる年です。そんな超高齢化社会に求められる介護の在り方とは、どのようなものなのでしょうか。
今回は、これからの時代の介護システムの柱となることが予想される地域包括ケアシステムの概要や解決すべき課題をご紹介します。
地域包括ケアシステムとは?
地域包括ケアシステムは、少子高齢化に対応するために国が進める政策の柱といえます。システムの概要と、必要とされるに至った背景についてご説明します。
地域包括ケアシステムの概要
環境の変化がストレスになる高齢者の中には、可能な限り住み慣れた地域や自宅で日常生活を送ることを望む人が多いでしょう。また、地域内で介護が必要な高齢者を効率良くサポートするためには、家族のメンバーや地域の医療機関、介護の人材が連携し合い、状況に応じて助け合う必要があります。
そこで、地域における「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の5つのサービスを一体的に提供できるケア体制を構築しようというのが、地域包括ケアシステムです。
つまり、地域包括ケアシステムとは地域の実情や特性に合った体制を整えていくものです。全国一律ではなく、各地域で高齢化がピークに達するときを想定し、その地域が目指すケアシステムを計画していきます。
ここでいう「地域」とは日常生活圏域を指し、おおむね30分以内に駆けつけられる場所を想定しています。高齢者の住居が自宅であるか施設であるかを問わず、健康に関わる安心・安全なサービスを24時間毎日利用できることが目的です。
地域包括ケアシステムの背景
地域包括ケアシステムが必要とされるようになったのは、日本における急速な少子高齢化が背景にあります。
2000(平成12)年に介護保険制度が創設されて以来、要介護で介護サービスを利用する人は着実に増加していて、団塊の世代の約800万人が75歳以上になる2025年以降は、高齢者の医療や介護の需要がさらに増加することは必至です。
2005(平成17)年の介護保険法改正で「地域包括ケアシステム」という用語が初めて使われ、少子高齢化の進行が引き起こすと予想される問題を緩和するために、地域住民の介護や医療に関する相談窓口「地域包括支援センター」の創設が打ち出されました。
その後2011(平成23)年の同法改正(施行は2012年4月から)では、条文に「自治体が地域包括ケアシステム推進の義務を担う」と明記され、システムの構築が義務化されました。
2015(平成27)年の同法改正では、地域包括ケアシステムの構築に向けた在宅医療と介護の連携推進、地域ケア会議の推進、新しい「介護予防・日常生活支援総合事業」の創設などが取り入れられ、さらに力を注いでいます。
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地域包括ケアシステムのポイント
地域包括ケアシステムの考え方や具体的なポイントについて、厚生労働省の資料に基づいてご説明します。
地域包括ケアシステムの構成要素
厚生労働省は、2013年3月、2014年3月の地域包括ケア研究会報告書において、地域包括ケアシステムの構成要素と「自助・互助・共助・公助」について次のように説明しています。
【住まいと住まい方】
生活の基盤として必要な住まいがきちんと整備され、本人の希望と経済力に沿った住まい方が確保されていることが地域包括ケアシステムの前提です。周囲のサポートは必要ですが、それと同時に高齢者のプライバシーや人間としての尊厳が十分に守られた住環境を実現する必要があります。
【生活支援】
心身の能力の低下、経済的理由、家族関係の変化などの要因があっても、尊厳ある生活を継続できるように生活支援を行います。
生活支援の中には、食事の準備など、サービス化できる支援から、近隣住民の声かけや見守りなどのインフォーマルな支援まで幅広く存在し、担い手も多様です。
【介護・医療・予防】
個々人の抱える課題に合わせて「介護・リハビリテーション」「医療・看護」「保健・予防」が専門職によって提供される(有機的に連携し、一体的に提供)。ケアマネジメントに基づき、必要に応じて生活支援と一体的に提供。
【本人・家族の選択と心構え】
「住まいと住まい方」「生活支援」「介護」「医療」「予防」の5つの構成要素には含まれないものの、地域包括ケアシステムを支えていく重要な要素として触れておく必要がある部分です。単身・高齢者のみ世帯が主流になる中で、在宅生活を選択することの意味を、本人とその家族が理解し、心構えを持つことが重要です。
自助・互助・共助・公助から見た地域包括ケアシステム
同じ資料において、「自助・互助・共助・公助」から見た地域包括ケアシステムについては、次のとおり説明しています。
【費用負担による区分】
「公助」は税による公の負担、「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担であり、「自助」には「自分のことを自分でする」こと以外に、自費による市場サービスの購入も含まれます。
これに対して「互助」は、相互に支え合っているという意味で「共助」と共通点はあるものの、費用負担が制度的に裏付けられていない自発的なものであり、主に地域の住民やボランティアという形で支えられています。
【時代や地域による変化】
「自助・互助・共助・公助」は、時代とともに範囲や役割を変化させていきます。
2025年には、ひとり暮らしや高齢者のみ世帯がより一層増加することが予想されるため、「自助」「互助」の概念や範囲、役割に新しい形が求められます。
住民間のつながりが希薄な都市部では、強い「互助」を期待するのが難しい一方、民間サービス市場が大きく、「自助」によるサービス購入が可能な部分も多いと考えられています。反対に都市部以外の地域は、民間市場が限定的になりますが、「互助」の役割が大きくなります。
「共助」「公助」を求める声が根強いのは確かですが、少子高齢化や財政状況を考えると大幅な拡充は難しいため、「自助」「互助」の果たす役割が大きくなることを意識した取り組みが必要です。
地域包括ケアシステムの課題
地域包括ケアシステムは、高齢者の介護予防、医療、福祉の充実に欠かせない重要政策ですが、課題もあります。
医療と介護の連携
75歳以上の高齢者の中には複数の疾患を抱えている人もいます。そういう人たちに安心して生活してもらうためには、医療・看護サービスと介護サービスの連携が大切です。しかし、現行の在宅サービスでは、夜間(深夜)や早朝の対応という点で不十分なところが見られます。介護者は高齢者に日常的に接する機会が多いため、日々の状態の変化などにも気付きやすい立場にあります。介護者が被介護者の病状の悪化や急変を察知した段階で、迅速に医師や看護師らと連携できるような体制の整備が求められます。
地域格差
実情や特性は地域ごとに異なるため、整えた後の介護体制に、地域間で格差が生じます。財源やマンパワー、高齢者人口のピーク時期も地域ごとに異なります。先行して地域包括ケアシステムを整備した市区町村の事例を参考にしつつも、それぞれの地域の特性を加味し、両者のバランスを考えながら整備計画を立てる必要があるでしょう。
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地域包括ケアシステムに希望を託して
地域包括ケアシステムは今後の日本の未来を明るくする希望の光です。被介護者やその家族にとっては、住まいの地域の地域包括ケアシステムの進捗や充実度が気になるところです。厚生労働省の公式サイトでは、都道府県や市区町村別に地域包括ケアシステムの事例を紹介しているので、ぜひ活用してください。親子が離れた地域に住んでいるケースなどでは、双方の地域の状況を知っておくと良いでしょう。
※本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。