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ロコモティブシンドロームとは?運動習慣で健康寿命を伸ばす!

「ロコモティブシンドローム」という言葉は、日本人の健康寿命を伸ばす取り組みを促すために、「日本整形外科学会」が2007(平成19)年に提唱したものです。
高齢化が進むにつれ、体の自由が十分にきかない状態で社会生活をおくる高齢者の数が増えています。加齢による衰えは仕方のないことですが、完全に寝たきり状態になる前に、できる対策は取りたいものですよね。
今回は、高齢の親を持つ人だけでなく、自分の老後が心配という人に向けて、ロコモティブシンドロームの症状や原因、予防法をご紹介します。

ロコモティブシンドロームイメージ1

ロコモティブシンドロームとは?

ロコモティブシンドロームとは何か、まず基礎知識をわかりやすくお伝えします。

ロコモティブシンドロームって何?

「ロコモティブ」とは移動能力があることを意味する言葉で、「ロコモティブシンドローム」とは、運動器の障害により、基本的な運動能力が低下している状態を指します。筋肉・骨・関節・軟骨・椎間板のいずれか、もしくは複数に障害が起こると、やがてバランス能力・体力・移動能力などが衰え、立ったり歩いたりといった日常生活の中で行う簡単な動作が困難になります。適切に対処しないと、運動器機能はさらに低下していき、最悪の場合は寝たきり状態になるおそれもあります。

ロコモティブシンドロームは、要支援・要介護の大きな原因の一つ

平成25年の厚生労働省の調査によると、要支援・要介護となった原因の上位は次のとおりです。

1位 運動器障害(骨折・転倒+関節疾患+脊椎損傷) 25パーセント
2位 脳血管疾患(脳卒中) 18.5パーセント
3位 認知症 15.8パーセント
4位 高齢による衰弱 13.4パーセント

日常生活の中のあらゆる動作は運動器の働きによって行われますが、加齢とともに体のあちこちに不調が現れ運動器機能の衰えも進みます。高齢者はロコモティブシンドロームになりやすく、転倒して負傷したことをきっかけに寝たきりになったり、体の痛みをかばううちに筋力が落ちたりして、介護が必要な状態につながりやすいのです。

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ロコモティブシンドロームかどうかをチェック!

自分では問題ないと思っていても、ロコモティブシンドロームの兆候があるかもしれません。
「ロコチェック」「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」で確認してみましょう。

早い段階で気付くのが重要

骨中のカルシウムや筋肉の量は、一般的に30代をピークに減少を始め、50代を迎えるとさらに急激に低下するといわれています。

ロコモティブシンドロームを予防するには普段の運動が大切ですが、日常的に体を動かしてこなかった人がいきなり無理をすると、怪我の危険性も高くなります。怪我で運動できない間にまた運動器が衰え、さらにロコモティブシンドロームが悪化する――という悪循環に陥るおそれもあります。

体を思い通りに動かせる30~40代、遅くとも40代の内には日々のトレーニングを習慣づけ、予防対策を始めると良いでしょう。50歳を過ぎてからトレーニングを開始するなら、いきなり運動量を増やさず、以下でご紹介する「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」のような軽い運動から始めてください。

ロコモティブシンドロームの症状

・ロコチェック
以下のチェック項目に一つでも当てはまったら要注意。トレーニングを始めて運動器の衰えを防ぎましょう。

「片足立ちで靴下をはけない」
「家の中でつまずいたり、足を滑らせたりすることがよくある」
「手すりなしで階段を上るのがつらい」
「布団の上げ下ろしなど、重いものを持つ家事がつらい」
「2キログラム程度(牛乳1リットルパック2本分)の買い物袋を持って歩くのがつらい」
「15分以上歩き続けることができない」
「横断歩道を青信号の間に渡りきれない」

・立ち上がりテスト(脚力やバランス能力のチェック)
高さ約40センチメートルの台に腰掛けて、反動を付けずに立ち上がれるかどうかを測定します。片足、両足それぞれで立ち上がれるか試してみましょう。
40センチメートルで試した後は、台を10センチメートルずつ下げ、同じように片足、両足で立ち上がってみます。片足で40センチメートルの台から立ち上がれない場合や両足で20センチメートルの台から立ち上がれない場合は運動器の衰えが進んでいる可能性があります。

・2ステップテスト(脚力やバランス能力、柔軟性のチェック)
大股で2歩歩いて両足を揃えて立ちます。スタート地点からの距離を計測し、「スタート地点からの距離÷身長」で2ステップ値を算出します。2ステップ値が1.3未満だと、運動器の低下が始まっているおそれがあります。

ロコモティブシンドロームイメージ2

ロコモティブシンドロームの原因

ロコモティブシンドロームの原因は、運動器の疾患と加齢による運動器機能不全の2種類です。また、自覚のない病気が原因となっている可能性も考えられます。

筋力の低下

加齢による筋力の低下と筋肉の萎縮は、特に下半身に現れやすく、高齢者の転倒事故を招く大きな原因となっています。
高齢者でなくても、運動不足によって筋力が低下するケースもあります。年齢に関係なく、誰でもロコモティブシンドロームになり得るのです。

バランス感覚の低下

バランス感覚を保つには、「視覚」「三半規管」「筋力」という3要素の連携が重要です。
視覚が衰えると明るさ暗さを感じにくく、色や物の形がぼやけて距離感をつかみづらくなります。平衡感覚は三半規管によって保たれていますが、この働きが衰えると、めまいやふらつきが起こるようになります。

平衡感覚の低下を招くのは、加齢と運動不足、そして脳の障害です。
高齢者には老眼や白内障などで視覚の低下が起こり、三半規管も衰えてきます。高齢者でなくても運動不足の人は、3要素の一つである筋力が低下しているため、視覚などに問題がなくても体を支えてバランスを取るのが難しくなります。

また、脳または脳につながる神経に問題が起きている場合、視覚からの情報をもとに発せられる脳からの司令が体にうまく伝わらず、思い通りに体を動かせなくなるというケースもあります。

骨・関節・筋肉にかかわる病気

骨や関節、筋肉の病気も、ロコモティブシンドロームの原因になります。

・骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
ホルモンバランスが崩れて骨密度が低下し、骨がもろくなる病気です。ほとんどの場合、痛みの症状がなく気が付きません。強度が低下した骨は、くしゃみなどの小さな衝撃で折れてしまいます。

・変形性膝関節症
膝の関節のクッションになっている軟骨がすり減り、膝の骨に関節炎や変形を生じる病気です。痛みや可動域の制限が起きます。膝の伸縮幅が減り、正座ができなくなったりします。

・脊柱管狭窄症
首のあたりから腰まで、いわゆる背骨を作っている椎骨の中の空洞を脊柱管といい、この中を通る神経が圧迫されることによって、足の痛みやしびれを起こします。排尿障害や排便障害が起きることになり、生活に支障をきたします。

ロコモティブシンドロームの原因が脳の障害や病気である場合、いくら運動不足を解消しても状態は改善されません。自分で気付いていない病気の症状が現れている可能性もあるため、ロコモティブシンドロームの兆候が見られたらすみやかに医師の診察を受け、早い段階で原因をはっきりさせたほうが良いでしょう。

ロコモティブシンドロームイメージ3

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今日からすぐ実行!ロコモティブシンドロームの予防法

ロコモティブシンドロームの原因は加齢だけではなく、運動不足や食生活の極端な乱れも影響します。今からできる予防をしっかり実践することが大切です。

生活習慣の改善

・食生活を改善する
肥満体形の人は腰や膝に負担がかかり、やがて関節などに障害が生じて運動器機能が低下するおそれがあります。また、ダイエットなどで低栄養の食生活を続けていると、骨密度や筋肉量の低下が懸念されます。
体は食べたもので作られるため、健康を見直すなら食事から。ロコモティブシンドロームの予防にも、食生活の改善は重要ポイントです。

骨や筋肉を作るのに必要なのは、カルシウムとビタミンD、ビタミンB6、そしてタンパク質です。カルシウムは牛乳や乳製品、ビタミンDは魚類、ビタミンB6 はレバーやにんにく、タンパク質は肉類に豊富に含まれていますが、単にこれらをたくさん食べればいいというわけではありません。肥満を招かないためにも、ほかの栄養素とのバランスを考えて摂取する必要があります。

なるべく主菜と副菜を用意して、乳製品や果物を毎日食べるようにしましょう。炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルという5大栄養素をバランス良く摂取できる食生活を整えること。これが運動器の機能を守るためには重要です。

・関節への負担を避ける
歩くときはつま先に体重を掛けず、足の裏全体で着地すると膝の負担を抑えられます。靴は必ず自分の足に合うサイズや形状のものを選んで履きましょう。

膝や腰に不安がある場合、生活の場として望ましいのは和室よりも洋室です。正座は膝への負担が大きく、あぐら座りや床に座って足を投げ出す座り方も腰に負担がかかります。椅子や低すぎないソファを使い、膝や腰への負担があまりかからない生活を心がけましょう。布団よりもベッドのほうが、寝るときも起きるときも動作が楽です。

適度な運動

【スクワット(下半身の筋力を鍛える)】
1セット5~6回、1日3セット

1.肩幅より少し広く足を開いて立つ。つま先は30度開く。

2.膝がつま先よりも前に出ないように意識しながら、お尻を後ろに引くように膝を曲げて体を沈める。曲げるときは足の人差し指の方向に膝を向けておく。

3.太ももの前や後ろの筋肉に力が入っているかどうかを意識しながら、ゆっくり5~6回繰り返す。机に手を付いて行っても大丈夫です。

スクワットができない場合は、椅子に腰を掛け机に手を付いて立ち上がる動作を繰り返しましょう。

【フロントランジ(下半身の柔軟性・バランス能力・筋力を鍛える)】
1セット5〜10回、1日2~3セット
※すべての動作をゆっくり行うよう意識しましょう。

1.両手を腰に当て、両足で立つ。

2.片足を大きく前に踏み出す。このとき腰は落とさない。

3.太ももが床と平行になるくらいまで腰を深く沈める。

4.体を上げて、踏み出した足を戻す。

【片足立ち(バランス能力を鍛える)】
1セット左右1分間ずつ、1日3セット

1.周囲に手すりなどつかまる場所のあるところで真っすぐ立ち、片足を床につかない程度に上げる。

2.ふらついたらつかまって体を支えながら、片足で1分間立ち続ける。

3.「2」を1分間続けたら、反対の足で同じことを繰り返す。

「ロコトレ」を負担なく行えるようなら、ウォーキングやランニング、水泳など、もう少しハードなトレーニングを徐々に取り入れるようにしてください。

鎮痛剤などの活用

「立つ」「歩く」といった基本的な動作に痛みが伴うと、家から出ることが億劫になったり、痛みを感じる体勢を避けたりしがちです。しかし、そのまま外出や運動をしないでいると、筋力はどんどん落ち続け、さらに運動器の機能低下が進行する悪循環に陥ることになります。
湿布で炎症を抑えたり、医師の診断を受けて鎮痛剤などを処方してもらったりして、状態の悪化を防ぎましょう。

ロコモティブシンドロームイメージ4

悪循環に陥る前にロコトレを

ロコモティブシンドロームの怖さは、「体が思うように動かない」→「動くのをやめる」→「さらに体が思い通りに動かなくなる」という悪循環に陥りやすい点にあります。今回ご紹介した「ロコチェック」を行い、ロコモティブシンドロームの症状に心当たりがあるようなら、すぐに生活習慣の改善や「ロコトレ」を実践して、悪循環に陥る前に抜け出しましょう。
ただし、既に膝や腰などに痛みがある場合は、無理をして突然運動量を増やすのは危険です。自分だけで判断せず、医師に相談して適切な改善方法を指導してもらいましょう。

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この記事の監修者

    

在宅緩和ケア充実診療所・機能強化型在宅療養支援診療所
城北さくらクリニック
院長 犬丸秀雄
HP:http://houmon-shinryo.jp/jsc/

日本大学医学部卒業後、日本大学板橋病院(麻酔科・救命救急・ICU)を経て、赤塚駅前クリニックを開業し往診も行う。平成24年より、東京都練馬区を中心に訪問診療専門の診療所を開設。
24時間体制、コールセンター設置等を整備し、医師11名・看護師5名(令和3年6月現在)でご自宅や施設へ訪問診療を行っている。

※本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。

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