寝たきり高齢者の介護の仕方と、介護者の負担を軽減させるポイント
寝たきりになった高齢者は、自分の意思で身体を動かすことが困難です。そのため、寝たきりの高齢者の生活をサポートする介護者の存在がとても重要です。
老人ホームなどの施設に入ることなく、在宅で介護する場合、寝たきりの人をどのように介護すれば良いのでしょうか?
今回は寝たきりの人の介護の仕方についてご紹介します。
目次
寝たきりの人を介護するときの注意点
寝たきりの人を介護する際の注意点は主に4つです。
床ずれ・褥瘡(じょくそう)
寝たきりの人は、自力で身体を動かしたり姿勢・体勢を変えたりすることが困難です。
身体を動かさずにそのまま同じ姿勢の状態が続くと、身体にかかる圧力が偏って、血行不全や周辺組織の壊死が起きることがあります。
このような状態になることを、「床ずれ」や「褥瘡」といいます。
床ずれや褥瘡を避けるためには、定期的に体位変換を行い、適切にケアをする必要があります。
排泄
寝たきり状態の人はトイレまで行って排泄を行うことが困難なため、専用のトイレやおむつなどを使います。いずれも被介護者の身体を抱えたり持ち上げたりする必要があり、介護者の大きな負担になりやすいものです。
また、被介護者の精神面や尊厳にも関わることから、介護者は他の介護以上に神経を使うものです。
被介護者の体や環境の清潔保持
寝たきりになると、どうしても全身入浴の機会や着替えの頻度が少なくなります。その結果、身体や周辺環境の清潔さを保持することが難しくなりがちです。
全身入浴を頻繁に行うことが難しい場合でも、清潔さをできるだけ維持するための工夫は可能です。寝たきりの人を介護する際の大切なポイントといえます。
介護者側の負担
介護者にとって、寝たきりの人の介護は、精神的にも肉体的にも負担が大きくなりがちです。
それを一人ですべて行うのは難しく、中にはうつ病の発症につながったり、虐待へと発展したりする場合もあります。
一人で抱え込まず、介護サービスを上手に活用しながら、少しでも負担を軽減させることが大切です。
介護にお疲れなあなたへ
無料で有料老人ホームイリーゼの
資料をお送りしています
床ずれ・褥瘡を防ぐには
床ずれや褥瘡を防ぐポイントをお伝えします。まず、原因から見てみましょう
床ずれや褥瘡が起きる原因
寝たきりということは、長時間、同じ体勢で横たわっているということです。その結果、敷布団に接している皮膚や皮下組織が圧迫され、血行が悪化し、周辺組織に酸素や栄養が行き渡らなくなって、壊死状態を起こします。場合によっては、皮膚が剥がれ落ちて骨が見えることもあります。
発生しやすい場所
床ずれや褥瘡が発生しやすい場所には特徴があります。
体重がかかり、皮下脂肪が少なく、骨が突出していて触ると硬い部分です。
一般的には、後頭部、肩から肩甲骨、坐骨からお尻、肘、かかとなど骨が吐出している部位に発生しやすいとして知られています。
また、同時に低栄養と重なると悪化を早める事になります。
床ずれや褥瘡になったときの治療法
治療薬を塗る、細菌感染のために消毒や洗浄を行う、皮膚の移植など外科的治療を行うなど、いくつかの治療法があります。
いずれの場合も医師や訪問看護師など専門家に相談しながら治療をするのが基本です。
予防法
床ずれや褥瘡の予防には、定期的に体位を変換することが重要です。
その際は、被介護者の身体の状態をしっかりと把握した上で、痛みや苦しさを感じさせないように配慮しながら行いましょう。
シーツや寝間着のしわのせいで偏った圧力が生じ、それが原因で床ずれや褥瘡になってしまう場合もあります。シーツや寝間着にしわやたるみがないか、よく確認しましょう。
中でも敷布団に接触している部位については、常に肌の状態をチェックすることが大事です。
また、介護用ベッドの利用も効果的です。圧力が偏らずに分散できるよう設計された介護用ベッドなどを利用すれば、床ずれや褥瘡を発症しにくくなったり、体位変換を行う頻度を減らせる可能性もあります。
正しい排泄ケアの方法
寝たきりの人の排泄は、想像以上に難しいものです。正しい排泄ケアの方法を知り、被介護者と介護者の双方の負担を少しでも減らせるようにしましょう。
寝たきりの人の排泄の特徴
寝たきりになると、腸の収縮や腹圧のかかり具合が本来の体内の状態とは変わってくるため、排泄行為が困難になる場合があります。
寝たままの状態が続くと、直腸から肛門へ移動する便が横移動となることから重力がかからず、また腹圧もかけにくいため、排便がしにくくなりがちです。その場合は、介護者によるサポートがないと、スムーズな排泄を行うことができません。
したがって、寝たきりであっても、便意や尿意を伝えることができるうちは、なるべく便器や尿器を使用するようにしましょう。
便意や尿意をコントロールできない人、または伝えることが難しい人の場合は、おむつを使用します。
おむつを使用する場合、床ずれがお尻にある方は感染に注意が必要です。
寝たきりの人の排泄ケアのポイント
被介護者が自分でできることについては、なるべく自分でやるように促しましょう。それが筋力などの維持に役立ちます。
ポイントは、寝たきりの状態になっても、排泄の際にはできるだけ身体を起こして座った状態にさせることです。それによって自然な排便を促しやすくなります。
また、被介護者が便意や尿意を訴えた際は、排泄を最優先させましょう。寝たきりの人は筋力が衰えているため、便意を我慢できないことがあります。
介護にお疲れなあなたへ
無料で有料老人ホームイリーゼの
資料をお送りしています
被介護者の体や生活環境の清潔を保持するポイント
寝たきりの人は、全身入浴や着替えの頻度がどうしても減少しやすく、衛生面で問題が生じがちです。身体の清潔を保つためには、洗髪や清拭(せいしき)を行ったり、訪問入浴介護を利用したりしましょう。
洗髪の手順
基本的に仰向けの状態で洗髪をします。
後頭部の下に洗面器などを配置し、首の下には枕などを挟んで首の位置を安定させます。
耳に水が入らないよう耳栓などをした上で、38~40度前後のお湯を用意し、シャンプーとすすぎを行ったら、タオルで十分に水分を拭き取りドライヤーで乾かします。
そのとき、注意点があります。寝たきりの高齢者は温度に対する感覚が鈍っていることがありますので、お湯やドライヤーの熱による火傷のほか、頭皮などを傷めないように気をつけましょう。
また、身体を冷やさないよう、室温は22~26度くらいに設定しておくと良いでしょう。
清拭の手順
清拭とは、入浴が困難な人に対して、お湯を含んだタオルなどで全身を拭いて清潔な状態を保つことです。
身体全体を清拭する全身清拭の場合、ほぼ全裸に近い状態になるため、被介護者のプライバシーを尊重することが大切です。清拭していない身体の部分はバスタオルなどで隠し、必要以上の露出を避けながら行うのが良いでしょう。
清拭の順番としては、上半身から下半身、そして陰部の順で行います。
その際、身体を冷やさないよう、室温は22~26度くらいに設定しておきましょう。
訪問入浴介護を利用する流れ
訪問入浴介護とは、専門の介護スタッフが利用者の自宅に専用の浴槽を持参し、被介護者の入浴をサポートするサービスです。
サービスを受けるためには、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談しましょう。
看護師や介護施設職員(ヘルパー)数人がチームでやってきて、バイタルチェックから入浴までを行います。
介護者の負担を軽減するには
寝たきりの人の介護は重労働になることがあります。介護を長く続けるためには、介護者の負担を軽減する工夫が大切です。
プロの手を借りる
おすすめは、介護サービスを活用して、プロの手を借りることです。
介護サービスは主に「居宅サービス」と「施設サービス」の2つに分けられます。
・居宅サービス
在宅で受ける介護サービスのことで、訪問介護や訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)など、さまざまなサービスがあります。
・施設サービス
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設、介護療養型医療施設などに入所している人が利用する介護サービスです。
担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなど、地域の相談窓口を活用することで、被介護者の状態に合った適切な介護サービスが見つかるでしょう。
兄弟や親戚などを頼る
介護の負担を一人で抱え込むと、周囲が気づかないうちに、肉体的にも精神的にも追い詰められていたという事態が起こり得ます。
そこで、他の家族や親戚などと現状をよく話し合って理解を促し、可能な限り負担を分担して、介護を共有してもらいましょう。
介護にお疲れなあなたへ
無料で有料老人ホームイリーゼの
資料をお送りしています
寝たきり介護は、手抜きをせずに気を抜いて
寝たきり高齢者の介護は、想像以上に大変な面があります。それなのに、「自分の親だから」などの理由で自分一人で全てを抱え込んでしまう人もいます。しかしそれでは、介護者だけでなく、被介護者にとっても納得のいく介護を継続することは難しいでしょう。
公的機関だけでなく民間の介護サービスも活用したり、介護用の福祉用具などを取り入れて、自分の負担をなるべく軽減させましょう。
ずっと根を詰めて介護ができるわけではありません。時には気分転換をしてリラックスしながら、気長に続けられる環境を整えることが大切です。
まずは寝たきりになる前にお住いの地域包括センターなどの適切な窓口に相談しましょう。
この記事の監修者
在宅緩和ケア充実診療所・機能強化型在宅療養支援診療所
城北さくらクリニック
院長 犬丸秀雄
HP:http://houmon-shinryo.jp/jsc/
日本大学医学部卒業後、日本大学板橋病院(麻酔科・救命救急・ICU)を経て、赤塚駅前クリニックを開業し往診も行う。平成24年より、東京都練馬区を中心に訪問診療専門の診療所を開設。
24時間体制、コールセンター設置等を整備し、医師14名・看護師5名(令和5年4月現在)でご自宅や施設へ訪問診療を行っている。
※本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。