年金だけで生活できる?知っておくべき年金受給額・支出・税金・控除
年金について不安を抱えている人は多いでしょう。メディア等では「何歳から支給されるのか」「いくら支給されるのか」「年金だけで生活できるのか」などさまざまな懸念点が報じられており、老後破産への不安が広がっています。
では実際に、安心して生活できる分だけ年金は支給されるのでしょうか。
今回は、年金に対するさまざまな不安をお持ちの人向けに、老後生活にかかるお金と年金の仕組みについてわかりやすくご紹介します。
目次
老後の生活にいくらかかる?
まず、老後生活にかかるお金の内訳についてご説明します。
高齢者の1カ月の消費支出と内訳
総務省統計局の家計調査年報(2015年)によると、1世帯の1カ月当たりの消費支出は以下の通りです。
・2人以上世帯の1カ月当たりの消費支出
~29歳 :24万8,533円
30~39歳 :27万1,349円
40~49歳 :31万9,584円
50~59歳 :33万9,967円
60~69歳 :28万9,289円
70歳以上 :23万9,454円
次に、基礎的支出(光熱費など生活に必要不可欠な支出)と選択的支出(旅行、教育娯楽、外食、衣料品など自分で選択できる支出)について見てみましょう。
・基礎的支出
基礎的支出では「食費」が全世代を通して平均的に高額で、中でも50~59歳では7万8,665円となっています。次いで、「光熱費」「住宅費」の順で多くなっており、それぞれの平均額は2万1,983円、2万1,388円です。
「保険・医療費」については、59歳以下の人の平均が9,678円なのに対して、60歳以上の人の平均は1万4,734円と一気に跳ね上がっています。
・選択的支出
選択的支出の中で差が出ているものとしては、「教育費」と「交通・通信費」です。
例えば教育費は、40~49歳が2万7,545円なのに対し、60~69歳は1,962円、70歳以上は530円と、かなりの差があります。
交通・通信費の差を見てみると、50~59歳が5万1,673円と、全体平均の4万4,122円を上回っていますが、70歳以上は2万4,020円と全体平均の約半分になっています。
老後への不安と生活費に最低必要な額
次は、老後の生活費に必要な額を見てみましょう。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2015年)」によると、老後に必要なお金に関する集計結果は以下の通りです(20~70歳以上)。
・老後の1カ月あたりの最低予想生活費:27万円
・年金支給開始までに貯めておきたい貯蓄額:2,173万円
生活費にフォーカスしてみると、厚生労働省が発表している平成28年度のモデル世帯における1カ月の老齢年金受給平均額が22万1,504円なのに対し、約5万円も高くなっています。つまり、現実問題として年金だけでは毎月約5万円足りないということです。
その点については回答者も認識していて、「年金で老後生活を賄えるか」という質問に、「不自由なく暮らせる」と回答した人は全体の4.4パーセント。「日常生活程度は賄える」と回答した人は46.5パーセント、「日常生活程度も賄うのが難しい」と回答した人は47.3パーセントでした。
多くの人は、年金や保険、今ある金融資産だけで老後の生活を送るのには不安があると感じているのが実情です。
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年金はいくらもらえるの?
年金は、これまで収めてきた年数や、厚生年金か国民年金かなど、年金の種別によって受給額が異なります。実際にどれくらいもらえるのかを見てみましょう。
モデル世帯の年金受給額
厚生労働省の発表によると、2016年の受給モデルは、国民年金6万5,008円、厚生年金は夫婦で22万1,504円となっています。
これは、20~60歳まで国民年金保険料を払い続けた場合にもらえる額であり、未納期間がある場合は、その分減額されて支給されます。
厚生年金も20~60歳までの40年間納めた場合の計算になりますが、国民年金分6万5,008円×2(夫と妻の2人分)と、厚生年金分9万1,488円を合計した額が支給されます。
※モデル世帯として厚生労働省が想定しているのは、夫が平均的な男子賃金で40年間会社員として働き、妻が専業主婦である夫婦です。
年金の平均受給額
上記のモデルケースと実際の受給金額には、以下のような差異があります。
【実際の需給金額】
・国民年金:5万4,414円
・厚生年金:14万4,886円(夫と妻の2人で)
厚生労働省が想定しているモデルケースと比較すると、国民年金で1万円ほど、厚生年金で8万円ほど低くなっています。これでは予想生活費の27万円には到底届かず、年金だけで生活するのは難しいことがわかります。
●2017年4月分(6月支給)から0.1パーセント引き下げ
国民年金の場合は、受給者が受け取れる満額月額で、前年度比67円減って6万4,941円、厚生年金は、モデル世帯の場合、前年度比227円減って22万1277円となりました。
毎年、物価などの変化に合わせて額が決定されていますが、前年の消費者物価指数(消費者が買う生活品の価格変動指数)が下がったことを受けての減額となりました。
年金にも税金がかかるの?確定申告すべき?
ここでは、年金にかかる税金についてご紹介します。
公的年金には税金がかかる
年金には、税金がかかるものとかからないものがあります。
税金がかかる代表的なものには「老齢厚生年金」があり、かからないものには「障害年金」「遺族年金」があります。
通常、企業に勤めている場合は老齢厚生年金を受給することになりますが、老齢厚生年金の場合は税金が天引きされるため、基本的に確定申告は必要ありません。
自分が受け取れる年金の種類を知っておくことで、後々それが確定申告をしなければならないものであるか否かの判断をしやすくなります。
また、年金基金に加入している場合は受け取れる額が上がることもあるため、申告の際によく確認しましょう。
確定申告が必要なケース、不要なケース
障害年金と遺族年金は確定申告の課税対象外です。また、年金の受給額についても、老齢年金の場合は、65歳未満で70万円未満/年、65歳以上で120万円未満/年のケースで課税対象外となります。
65歳以上で年金基金だけ受け取っている場合は、年間で78万円にしかならないので、そもそも課税対象になりません。
定期的に送られてくる年金定期便を確認して、自分がどれくらい年金をもらえるのかを把握しておくことで、将来かかる税金に対しても備えることができます。老後生活の支出が気になる人は、今から税金についてもしっかり調べておきましょう。
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年金受給者を扶養家族にする「老人扶養控除」とは?
年金をもらっている家族を扶養に入れる「老人扶養控除」についてお伝えします。扶養控除と聞くと子供が対象と考えがちですが、高齢者もその対象になるのです。
老人扶養控除とは?
老人扶養控除とは、70歳以上の高齢者を扶養親族にできるという制度です。
ただし、扶養に入れるためには以下の条件を満たす必要があります。
1.6親等以内の血族か3親等以内の姻族
2.1カ月間の所得が38万円以下
3.同一生計
4.対象者が他の控除対象配偶者や扶養親族控除の対象となっていない
「3」については少々複雑で、場合によっては別居していても認められます。
例えば、扶養対象者が施設に入っていて、扶養する側がその費用を負担しているケースも同一生計に含まれます。この場合の所得控除額は48万円です。
一方、同居している場合の所得控除額は58万円です。
自宅に70歳以上の高齢者がいる人は、老人扶養控除制度を活用すれば、経済的負担の軽減につながります。
「まだ大丈夫」なうちから老後について考えよう
自分の老後について考えたとき、定年退職を迎えて無職になっても、ちゃんと暮らしていけるだろうかという不安がつきまといます。年金についてはすでに多くのWebサイトや書籍で取り上げられているため、自力で情報を得ることもできますが、制度を完全に理解するのは素人には難しく、わからない点も出てくるでしょう。そのときは専門家に相談することをおすすめします。
「老後なんて、まだ先の話」と思わずに、今から将来を見据え、収支バランスのとれた生活設計を考えましょう。
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